
2025年3月某日、秋田菫さんの工房を訪ねました。
秋田さんは唐津の山の中腹に工房を構えています。
秋田さんは、武蔵野美術大学の陶芸専攻を卒業後、唐津の竹花正弘氏の元で修行、三年間学んだのちに独立。
一昨年念願の薪窯を自作し完成させ、現在は、その窯で器を焼いています。

子供の頃から、絵を描くことが大好きだったそうで、毎日夢中で描いていたとか。
そんな秋田さんは、次第に絵を描くことよりも、ものづくりに興味を持つようになったのだそう。
それが高じて陶芸の道を歩み始めます。
大学では、最初はデザインを中心に学んでいたそうですが、インターンで訪れた山口で土器と出会い、
山の土で土器を焼いてからは土と火の虜に。
大学卒業後、美術館めぐりをしている中で唐津焼に魅了され、唐津に移住を決めます。
そして唐津の作家で、作品作りに一番共感した竹花氏の元で修行することを決めたのでした。
また、古唐津研究会にも入り、師匠や研究会の方々と一緒に古唐津に触れる中で、
古唐津の持つ素朴さや色味やフォルム、土のありようの虜となり、
そのエッセンスをどのように自身の器に生かすか、夢中になっているそう。
古唐津の中に、秋田さんがやりたいことが、ぎっしりと詰まっているとか。
それを追求することを、ずっとやっていたいとおっしゃっていました。

さて、秋田さんの自作の窯は「割竹式登窯」という古唐津の時代にあった窯の作りにならったもの。
なんと、煙突がない窯なのです。
こんな窯は初めて見ました。

「煙突いらないんですか?」と尋ねましたら、問題ないそうで。
山の斜面を利用して、下から上になだらかに火が上り、最上部で抜けていくという、なんとも原始的なもの。
この窯を見て、秋田さんの向かう世界は、こちらなのかな、と感じました。
つまり自然に逆らわず、その流れのままに自身を委ね、生まれてくるものの形を整える、ということを生業にする、ということかな。
彼女が器に描く花や草、そして彼女が生み出すラインのやわらかさからも、自然との対話がとてもうまい人なのだなと感じます。
自作の窯も、火を入れている回数から見ても、まだまだ難しいところがたくさんあるであろうに、そうしたところは軽やかに飛び越え、うまく付き合っているのだなぁと、感じ入りました。
当店で前回、秋田さんの展示をしたのは3人展。
今回は2年ぶり、初めての個展となります。
前回も、その繊細さ、しなやかさに魅せられたのですが、今回はさらに、足元の美しさが整ってきたように感じられます。
唐津という土地の伝統と、その土、窯の上に、秋田菫さんのしなやかな感性が映し出される展示となるのでは、と期待が膨らみます。
きっと素敵な器が並びます。
6/21(土)〜秋田菫展に、ぜひお越しください。








Sumire Akita solo Exhibition
Jun 21 sat-27 fri
We are pleased to present a solo exhibition by ceramic artist Sumire Akita, who lives and works in Karatsu, Saga Prefecture.
Akita studied under Karatsu potter Masahiro Takehana for three years before establishing her own practice.
She digs her own clay, paints familiar plants onto her forms, and fires her works in a wood-burning kiln she built herself.
Her pieces gently reflect the natural beauty of Karatsu and the generous spirit often found in old Karatsu ware, reinterpreted through her own unique perspective.
Delicate yet strong brushwork, soft contours, and a quiet presence with an inner core—these qualities come together to form works that we invite you to experience in person.
秋田菫展(陶)
佐賀県唐津市を拠点に作陶を続ける秋田菫氏の個展を開催いたします。
秋田氏は、唐津の陶芸家・竹花正弘氏のもとで3年間学んだ後、独立。
自ら土を掘り、身近な植物の姿を器に描き、自作の薪窯で器を焼成してい
ます。
その器には、唐津の自然の美しさと、古唐津に見られるおおらかさが、
彼女自身の視点で構築され、柔らかく映し出されています。
繊細でいて力強い筆致、柔らかな輪郭、そして静けさの中に潜む芯のようなもの
そうした魅力を、ぜひご高覧ください。
2025年6月21日 (土)〜27日(金)
会期中無休
営業時間 12時~18時
最終日17時まで