3月21日(土)〜27日(金)まで個展をお願いした高木剛さんは、粉引を中心に仕事をされている若手作家で、日常使いの器から、李朝の写しの壷や瓶などを作っています。
粉引ならではの表情が魅力の、なんとも感じのよい器を作る作家です。
そんな高木剛さんにお話を伺いに、1月の寒い日、工房を訪ねました。
ももふく : そもそも、陶芸をはじめたきっかけは何だったのですか?
高木 : もともとモノ作りには興味があったのですが、高校生の頃は特に美大に行ってみようというのは、なんか違うなと思ったんです。普通に進学するのも違うなと。
高校を卒業してから、たまたま父の紹介で東京のギャラリーで働きだしたですが、そこのオーナーの方に「絵で食べて行くのは難しいけれども、器の世界は、なかなか面白いよ」という話をきいて、陶芸は面白いかもしれんなと思ったんです。
そして、そのギャラリーで知りあった山梨の作家の方の元で修行させてもらえることになったことが陶芸を仕事にするきっかけになりました。
ももふく : その方が粉引を中心に作っている作家だったのですか?
高木 : いえ、そこでは粉引だけでなく色々なタイプの釉薬のものを作っていました。
そちらで3年ほどお世話になってから、東京に戻って、下町にアトリエを借りて作陶をはじめました。アルバイトをしながら4年ほど、そういう暮らしをしていました。
そのうち、なんとなく京都に行ってみたいと思うようになって、そのインスピレーションのままに、こちらに来た、という感じです。
ももふく : 知らない土地で工房探すのは大変ではなかったですか?
高木 : なんとなく人づてに。最初は街のほうに住んでたんですが、そのうちに田舎のほうに通ったり、その土地の人に話を聞いたりしているうちに、上手い具合にみつけることができました。
この辺りは、畑をやっている人や山を持っている人が、ええ人が多いんです。だからこちらに来たくて来ました。
ももふく : 工房をかまえて、最初から仕事は専業でできたんですか?
高木 : はじめは、やっぱりアルバイトをしながら作陶する、という感じでした。
ただ、京都は手作り市が盛んで、そういうところに出品しながら、少しずつ、これだけでやっていけるようになった、という感じです。
ももふく : 粉引といっても、李朝の写しも多いですよね。もともと李朝がお好きなのですか?
高木 : やはり古いものを勉強していくうちに、唐津とかも好きなんですが、李朝の雰囲気が好きで、最初はそういうものを再現したいと思って挑戦していました。
けれども、李朝などの大陸から渡ってきたものは、やはり歴史背景というかバックボーンが全然違うから、再現というのは違うのかな。
そういう姿形にとらわれたくないな、でも、どうしたらいいのか、という時期がありました。
そんな時、たまたま3年ほど前に韓国で作陶させてもらえる機会があって、韓国の窯元のおじいさんのところで轆轤を2週間ほどひかせてもらったんです。
言葉も通じない中で、それでもいろいろ感じるところがあって、それまでのモヤモヤとしていたものがふっきれた、自分のできるものを地道にやっていこうと、最近はそういう感じでやっています。
自分では周りの状況や時代を変えられるわけではないので、流されないよう、自分なりの道をみつけていこうと思っています。
ももふく : 高木さんの粉引は、例えば、貫入やツヤのあるものなどは、独特の柔らかさがあって、ちょっと染みになりやすそうなものもありますし、今時の流行のマットなものばかりでなく、いろいろなものを作られていますけれども、理想の粉引のような具体的なものがあるのですか?
高木 : 粉引って一般的に、柔らかいとか、モロいとか思われているけれども、実はそういうのは、土の選び方や化粧の具合によるものなので、欠けやすいというわけでもないんです。
やはり器というのは実用のものやから、確かに粉引は染みになりやすいけれども、普段使の器として、ここまでなら許容できるライン、ここからはアカンというのがあると思うんです。
なんでも同じような表情の粉引というなではなく、その用途に見合った粉引の器というものを作りたいと思っています。
ももふく : 高木さんは蹴轆轤を使っているんですねぇ。大変じゃあないですか? 腰を痛めたりしませんか? そして、そちらの大きい丸い円盤はなんですか?
高木 : こっちは手回し轆轤。電動もあるけれども、今はあまり使わなくて、こういう自分でまわすものを使っています。
電動もいいんだけれど、昔ながらの不便なものを使うことで、道具から教えてもらっていると感じるんです。
まだまだ勉強中やから、具体的に言葉では教われないようなことを、こうした道具によって体に教え込むっていうか、そういう感じです。
ももふく : 道具も手のかかるものを使っていますけれども、仕事も面倒なことをしてますね。これ、生掛け(素焼きをしないで釉掛けをする)なんですね。大変じゃあないですか。溶けちゃったりしないんですか?
高木 : やっぱり平もの(皿など)は(生掛けをするのは)難しいですけれども、これも失敗しながら、試行錯誤しながらやってみてます。
やっぱり粉引の表情の柔らかさというのは殺したくないんで、粉引のよさを生かせるようにしたいんです。
粉引は使って行くと変化し続けますけれども、その経年変化を、どう起こしていくかというのも、試しながら、やってみているところです。
「焼き物は、焼いてみないとわからない、というところが面白い」
って高木さんはいいました。
この工房で作られる高木剛さんの器たち。
今週末、21日(土)から並びます。
ぜひ、高木さんの粉引に会ひにいらしてください。