
モノが語り 場が呼応する
モノは問いを投げかける
ものは、ただそこに在るだけで、
世界の見え方を揺さぶることがあります。
器や工藝は、
使うための道具であると同時に、
人の時間や記憶を変え、
空間や関係までもひそやかに組み替える「装置」です。
ここで扱うのは、
土地や文化、歴史を背景に生まれ、
作り手の時間を宿したモノたちです。
「場」として見つめていること
この場では、
モノと人、時間と空間のあいだに生まれる、
微かな変化を見つめています。
モノが置かれたときに立ち上がる空気の密度、
他のモノとの共鳴、
その関係によって変わる風景。
ここで展示するということは、
ただ器を並べることではありません。
光、影、言葉、空間を含めて、
「どのように見えるか」という文脈を編集することです。
答えを出さない場であること
この場は、答えを出すためには存在していません。
ここでは、モノが投げかける問いに耳を澄まします。
その問いは、ときに形や質感を通じて現れ、
ときに空間の中で沈黙します。
見る人がそれぞれに意味を拾い、
それぞれの時間に持ち帰える。
ギャラリーという場は、
その揺らぎを受け止める装置でありたいと考えています。
豊かさを引き継ぐために
モノに宿る豊かさは、
手に取った瞬間だけで終わるものではありません。
それを暮らしに持ち帰り、
時間をかけて使い続けるなかで、
その豊かさは人の内側で息づき、
次の時間へと受け継がれていきます。
私たちは、この空間で出会うことを通じて、
そうした時間の連なりを編み直したいと考えています。
この場で出会うということ
ここは、モノが語り、人が応答する場です。
ただ「ここにある」ということから始まる体験を、
静かに共有するための空間です。
それは、語りすぎず、装飾せず、
モノに宿る揺らぎや強さをそのままに見せること。
この場で出会ったひとつのモノが、
時間や関係の見え方を変えることを願っています。
